介護教員北村圭吾の介護ブログ

介護の現場から介護教員へ転身。介護について介護職と介護職以外の方みんなで考えるブログ

ふたつの「おむつ外し」

言葉遣いシリーズ

2020年のシリーズを締め括るのは

「おむつ外し」

医療・介護の仕事をされていると
この言葉を聞いたことがある
という方は多いと思いますが

実はこの言葉は
ふたつの遣われ方をしています

ひとつ目は
おむつを使っている方が
自分でおむつを脱いでいる状態

を指して使われています

職員同士の会話の中で
「あの人よくおむつ外している」
「あの人おむつ外しあるやろ」

という使われ方です

その言葉に含まれる意味は
「おむつを脱ぐから自分たち職員が困っている」

つまり
目線(主語)が自分たち職員である
ということです

言葉遣いシリーズでは何度もお伝えしていることですが

目線(主語)は本人であることが
大切だと思います

だからこそ
介護職はその先を考えているんです

「なぜおむつを脱ぐのか」

排泄して不快だから脱いだ
装着感に違和感・不快感がある
暑い
痛い etc

何が原因なのかを考え
パッド交換のタイミングや
おむつの当て方など

手段を変えておられると思います

その方がおむつを脱ぐのは
「快適ではないから」
ですね

これがもうひとつの
「おむつ外し」
につながります


ふたつ目は
「安易なおむつの使用状態から外れよう」

というものです

皆さんは
「いま自分でおむつを使いたい」
でしょうか

排泄をしたくなれば
トイレで排泄したいですよね

その自然な姿を継続してもらう
というのが

ふたつ目のおむつ外しです

これに取り組まれている事業所は
どんどん増えていっています

もはや介護業界では
常識になってきています

「7つのゼロ」

というのをご存知の方も
多いでしょう

補足ですが
必ずしもおむつを使うこと全てが
いけないとは思いません

在宅サービスを利用されていて
普段はご家族が介護をされている

そういうケースでは
おむつを使うことが
ご家族の負担を減らすことになり

結果ご本人にとっても
望ましいケースもあります

大切なのは
「おむつを使うかどうか」
ではありません

「その方ができる限り
 自然に生きていける」

それを求めていくこと
だと思います

パッドを交換することも
食事を介助することも
入浴の介助をすることも

あくまで「手段」のひとつです

生き方が同じ方は
一人としていません

時には大声を出されたり
時には爪を立てられたり
性の意欲に戸惑うことも
あるでしょう

年末年始も変わらず仕事
という方も多いでしょう

それでも毎日毎日
アセスメントを繰り返し
試行錯誤を繰り返し

目の前の方の幸せを
求め続けてる皆さんは

めちゃくちゃ素晴らしいんです

決して高待遇とは言えない中

夜勤で生体リズムも整え辛い中

職場の人間関係に悩んでいる中

それでも
人の幸せとは何かを求め続ける
介護の仕事は

こんなにも素晴らしいんです


広めていきましょう

介護の素晴らしさを

介護職の素晴らしさを

介護に携わる全ての方が
輝いて働いていけますように✨

良眠?

言葉遣いシリーズ
今回は

「良眠」

これも現場時代から違和感を抱えていまして

また最近ご質問もいただきました

先日の合同セミナーでも
薬剤師の先生から
眠剤
について講義をしていただきましたが

自分が抱えていた違和感は

「良眠て何?」
です

夜勤をしていて記録を書く際
「良眠」
または
「良眠している」
と書かれているのをよく目にしました

以前には「良眠ハンコ」なるものもあり
良眠と彫られた判子を記録用紙に押していた
なんてものもありました


介護施設で夜間見回りをしている時
その方の状態を見て回りますが

基本的には目視での観察になります

その方が睡眠状態にあるのか
覚醒状態で目を閉じているのか

また睡眠状態にあるとしても
それが良い睡眠状態なのか

見ただけでは分からないです

それを次の職員へ
「皆さん良眠されてました」
と申し送られます

記録や申し送りは事実を事実として
正確に伝える必要があります

薬剤師の先生の講義から

不眠か良眠かは
「日常生活に支障があるかどうか」
と伺いました

ということは
良眠か良眠でないかは
その場では判断できないはずです

ではどうすれば良いか?
ですが

事実を事実として表現するのが
適切だと思います

目を閉じて横になり休んでいる
いびきをかいている
ベッド上ゴソゴソと体動を繰り返している
口を開けたまま寝息を立てている
etc

その時観察したものを
そのまま表現してはどうでしょうか

施設や利用者によって違いはありますが
夕食後から起床までは10時間程度あります

仮にそのほとんどを睡眠時間だとすると
非常に長時間になります

その時間全てが良眠とは考えにくいですね


職員の方々はよく知っています
深く考えています

「いつもこれくらいの時間に目を覚まされる」
「この時間にナースコールを押されることが多い」
「今日は下剤をこれくらい飲まれているから
 排便があるかもしれない」
「今日の活動量がこれくらいと聞いたので
 お疲れかもしれない」

そう考えながら夜勤をしています

自分自身も疲れているのに
仮眠も取れず眠いのに
家では子どもが寝ているのに

対象者の方が安心して休めるように

少しでも快適に休めるように

他の職員が家族と過ごせるように

一晩中気を抜かずに頑張っているんです

にも関わらず
特に外部の方から評価をされやすいのは
見えている部分です

必死に頑張った一晩の記録が
「良眠」
とだけ書かれている記録からは

その職員が何をしていたのか
利用者がどんな様子だったのかが
読み取れないです

どんな仕事をしているのか

どんな想いをもっているのか

表現を変えることで
評価は変わってきます

介護職が正しく評価されるために
あなたが正しく評価されるために

正しく言葉を遣っていきませんか

「(介護)拒否」って言わない?

恒例の言葉遣いシリーズ

今回は

「拒否」

医療・介護の現場で
「食事拒否」
「入浴拒否」
「介護拒否」
「リハビリ拒否」
など使われているのをよく耳にします

また最近は
「拒否って言わない方が良いんですよね」

と聴かれることも多くなってきました

医療職・介護職などが
ケアを提供しようとした際

対象の方が拒んだ時に使われています

入浴にお誘いした際に
「風呂には入らん」

ベッドから車いすに移乗する際
立ちあがろうとしない

そういった際に
「介護拒否あり」

と表現されることがあります

結論を申し上げると
職員目線だと
「拒否」
になるのだと思います

本人目線でみると
「自衛」(自己防衛)
ではないでしょうか

本人からすると
「◯◯だから風呂には入らん」
「◯◯だから立ち上がらない」
といった理由があるはずです

例えば
普段は夕食後に入浴しているから
今は入らない

車いすに移ってもどこへ連れて行かれるのか
分からないから立ち上がらない

など他にも様々な理由が考えられます

職員の方々は
そういった「理由」を深く考えて

さらにチームスタッフや他職種と考え

本当に様々なアプローチをしています

それでも常に有効なアプローチ
とは限りません

うまくいかないとことの方が多いかもしれません

それでも
何度も何度もチャレンジします

「目の前の方に
 少しでも快適に過ごしてもらいたい」

その想いで挑戦し続けています

部分的に捉えると
努力が報われていないようにも思えます

それでも繰り返し挑戦し続ける職員は
知っているんです

「自分たちが諦めると
 その方の人生は『それなり』になってしまう」
ということを

こんなに素晴らしい仕事をしていても

「◯◯拒否」

という言葉で一括りにしてしまうと
介護職の仕事は理解されません

「⚪︎⚪︎と聴くと△△と答える」
「⚪︎⚪︎と言葉をかけ立ち上がりをサポートするも
 前傾せず」

のように
事実を正確に伝えることで
次に活かせる情報となります

決して「拒否」という言葉がいけないとは思いません

どう「遣うか」が大切だと思います

本人にとって
「分かってくれている」
という「安心」を提供するために

同じチームのメンバーと
次に活かすために

業界以外の方に
我々の仕事を正しく知ってもらう為に

言葉を大切に遣っていきませんか

「入居者」と「入所者」

定番の言葉遣いシリーズ

続けていきます

今回のものは
もうずいぶんと前から言われていることですが

「入居者」と「入所者」

何をいまさら

と感じる方もいらっしゃると思いますが

まだまだ定着していないことに
驚くことがありまして

特に経験の長いベテランさんや
管理者経営者クラスの方

また教育者の方までもが

「特養の入所者の方」

と表現されているのを耳にしまして

教育を行う方や先輩
上司の方から変わらないと

後輩や新人職員に
誤った教育をすることになってしまう

と思い投稿させていただくことにしました

介護保険サービスを利用されている方は
全員「利用者」ではありますが

中でも介護施設を利用されている方の中には

「入居者」
の方と
「入所者」
の方がおられます

特別養護老人ホーム(特養)や
認知症対応型共同生活介護施設(グループホーム)
住宅型/介護付有料老人ホーム(有料)や
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

に拠点を構えてる方は

「入居者」

介護老人保健施設(老健)や
〇〇療養所

などにいらっしゃる方は

「入所者」

となります

(病院等では「入院」となりますね)

両者の違いは

生活拠点がどこにあるか?

になります

生活拠点にいらっしゃる方は
「入居者」

生活拠点が別にある方は
「入所者」

ということですね

街中でよく見かける
新しく建ったマンション等にも

「入居者募集中」

の看板はありますが

「入所者募集中」

とは書かれていませんね


テレビ等メディアでは
「老人ホームの入所者」

という表現を見かけますが
違っている場合が多いです


いつも同じことを繰り返しますが
我々介護職は介護の専門家です

まだまだ決して高くない
介護に対するイメージや評価を上げ

全ての介護職が輝いて働けるように

介護の専門家として
正しい評価をされるためにも

まずは自分たちから
正しい表現をしていきませんか😊

介護士?介護職?

言葉遣いシリーズ
今回取り上げるのは

介護士

嬉しいことに最近
「介護業界を盛り上げよう」
「介護の素晴らしさを広げよう」

といった活動が盛んに行われており

特に20代を中心とした若い力が
SNSを活用し活躍しています

SNSの影響力は大きく

年齢や性別
地域を問わず様々な方と
より広い世界で繋がることが出来る
便利なツールですが

反面
適切なものも不適切なものも混在し
すぐに広まってしまいます

皆さんにお伺いします

介護士

とは
誰のことを指すのでしょうか?

インターネット上では
「介護の仕事をする者」
として使われることが多く見受けられます

介護に関する資格も数多くあり
その中に

「レクリエーション介護士
「スマート介護士

といったものがあるために
介護士
という使い方をされている方も
いらっしゃるかもしれません

それぞれ資格の名称として使われているので
こちらは正しい表記になりますが

介護士

というのは俗称であり正式名称ではない
とされています

以前
介護福祉士
のところでも触れましたが

今現在正しいとされている表現は
教科書を含む様々な書籍や
公の文書において

職種は
「介護職」

その職に就いているものは
「介護職員」

と表記されており
自分もその表現を用いています

(「介護福祉士」は資格の名称ですね)

 


実のところ
呼び方自体はどちらでも構わないと思います

重要なのは
正しい表現は何とされているか?
だと思います

専門職である介護職員が
自分のことを正しく表現していること
が重要なのだと思います

時代は流れ
「正しいもの」は変わっていきます

今の時代に自分のことを
「スチュワーデス」「スッチー」
と呼ぶ客室乗務員の方はいません

「看護婦」
と呼ぶ看護師の方もどんどん減ってきています

「保母さん」
ではなく保育士になりました


介護職がどれだけ価値のある仕事なのか
どれだけ素晴らしい仕事をしているのか

正しい評価をされるためのきっかけとして
時代とともに自分たちも変化し続け

「今」正しいとされている言葉を
遣いませんか?

第33回 介護福祉士国家試験の受験資格 「実務者研修の修了」

第33回
介護福祉士国家試験の受験申込が始まりました

介護福祉士の質の向上と
介護職員のキャリア形成の一環として

平成27年度の試験より
「実務者研修の修了」
が受験要因として加わりました

国家試験を受けられる方は
実務者研修をいつ受けようかと考えておられたと思います

今年度に関しては
年度初めより新型コロナウィルス感染症の影響により

実務者研修も中止や延期が相次いでおり
今なお実務者研修受講のタイミングに
悩んでおられるかもしれません

その影響もあり先月の17日に
社会福祉試験・振興センターより

「修了見込対象期間の変更」

が発表されました

通常1月の試験を受けるためには
12月末までに実務者研修を修了している必要がありましたが

今回の変更により
今年度の実務者研修においては

3月末までに修了すれば良い
と変更されました

無資格の方が受験資格を得るためには
6ヶ月の期間が必要とされているので

遅くとも7月開講の研修でなければ
間に合いませんでした

またヘルパー2級や初任者研修修了

といった有資格の方は最短4ヶ月となり

遅くとも9月開講の研修でした

それらが今回の変更で
3月末までに修了すれば良いと
延長されたことにより

最も遅い開講ですと
有資格の方は12月に開講する研修
でも間に合うとなりました


新型コロナウィルス感染症の影響で
勤務都合もつかず

「今年度の受験を諦めてしまっていた」

という声を聞きました

もしそういう方がいらっしゃるなら

無資格・有資格問わず
まだ間に合います

もちろん試験までに
時間的な余裕は例年よりも少ないと
思います

研修費用も安くはありません

ですが
年に一回の試験です

来年度の皆さんの状況も
今と同じとは限りません

もしも
「実務者研修が間に合わないから」

という理由で見送ろうとされている方が
いらっしゃるのであれば

決めてしまうにはまだ時間があります

今のところ
一度取得すると
永遠に保持ができる国家資格です

皆さんの今後の人生に
大きく影響すると思います

ご自身に
あるいは周囲の方に
役立つ情報であれば

是非お伝えしてあげて下さい

「声かけ」と「言葉かけ」

以前の自分の投稿について
ご質問をいただきました

「声かけ」
のことを
「言葉かけ」
と表現していた理由についてです

自分が投稿をさせていただいているのは
主に「言葉遣い」を入口として
介護職自身のプロ意識に働きかけ
介護職のイメージアップを図りたい

そういう想いがあります

「言葉かけ」
も同様です

皆さんは普段お仕事をされている際
必ず言葉かけをされていると思います

では「声かけ」とはどのようなものでしょうか?

「おい!」
「なあなあ」
「ねえねえ」
「ちょっと」

声かけには違いありませんね
しっかりと相手に声をかけています

長年の付き合いのある家族や友人であれば許されることもあるかもしれません

ですがたとえそういった関係性だったとしても
名前を呼びかけた方が相手はより気持ち良く受け取ることができます

相手に呼びかける際には
まず名前を呼ぶことが大事だと思うんです

そこには大切なメッセージが込められています

「貴方の存在を個として認めています」
「貴方がそこに存在していると認識しています」
「私は貴方を必要としています」

相手の名前を呼ぶことでこれだけのメッセージを発信することになるんです

もちろん相手が全てを受信出来るかは状況により変わりますが
その上で用件を伝えると
相手はメッセージを受け取り易くなります

「〇〇さん」
「こんにちは」
「□□です」

「声かけ」
ではなく
「言葉かけ」
と表現したのは

介護職が専門職であるからです

「何となく」ではなく

知識を持って行動をしているからです

言葉をかけるにも
タイミングや内容
立ち位置や声の大きさなど

一生懸命考えた上で行動に移しても
少し違うだけで相手を不安にさせてしまう

ことも多いです

日常で何十回何百回と繰り返しています

それだけ考えて繰り返し行動している介護職が

「単に思いつきで声をかけているだけ」

ではないと表現するために

「言葉かけ」

と自分は表現しています


世の中は4連休です
それでも世の中を支える為に
今この瞬間も働いている方々がおられます

この瞬間も目の前の方に安心してもらおうと
「言葉」をかけている職員がいます

いつもお疲れ様です

介護職を正しく理解してもらうためにも
皆さんの周りの方に
もっと言葉をかけていきませんか?